声に出さないけど思っていること

12月にいろいろな「12」を思う

昨年書こうとして書ききれなかった〈12〉について、書いてみる。

ちょうど一年前、初めて自分の作品を展示するきっかけとなったのがこの〈12〉だ。
展示会期中にこの記事を書き上げる想定だったものの、
思い入れというか思い込みというかが強すぎたために更新できなかった。

けれどもとても大切な数字で、タイミングよりも残すことのほうが大事と、一年越しに書き始めた。

 

これまで書いた中で最も長い文章になったため、目次をつけてみる。

 

① 日常にある12

生活の中で身近に感じられる12について考えてみる。

たとえば、時計の文字盤
たとえば、一年の月の数
たとえば、十二星座
たとえば、十二支
たとえば、1ダースのチョコレート
たとえば、平均律での1オクターブの音の数 

身近なところに12があるのはただの偶然ではなく、
12の特性によって生活に根ざした、という側面があるはず。

ただ、この投稿でそれらを探求・解明していこうというのではない。
書くことによって思考を整理し、伝えたいことを感じ取ってもらう、委ねまくりの3900字。

 

② 数の数え方としての12

古代、ものを数える際に、10本の手指を折り曲げて数える十進法(現代の方法)のほか、人差し指から小指までの12個の節を親指で数える十二進法の考え方があったそう。

英語やドイツ語などゲルマン語派の数詞は、10から19までの数のうち11,12と13以降とで構成が異なり、それを十二進法の影響とする説がある。

 

  英語 ドイツ語 スウェーデン
10 ten zehn tio
11 eleven elf elva
12 twelve zwölf tolv
13 thirteen dreizehn tretton
14 fourteen vierzehn fjorton

出典|Wikipedia

 

③ 一音節で一番大きな数の12

上記に関連して言えるのが、音節についてである。
英語を用いて数詞の音節を表記すると、以下の通りだ。

 

  一音節*   一音節   二音節
1 one 7 seven 13 thir•teen
2 two 8 eight 14 four•teen
3 three 9 nine 15 fif•teen
4 four 10 ten 20 twen•ty
5 five 11 eleven 100 hun•dred
6 six 12 twelve 1000 thou•sand

*「音節」とは、音声の聞こえのまとまりに合わせて一つの単語を区切る単位のこと

 

上記より、一音節で一番大きな数は12となる。
この音節単位の考え方を、私はしたことがなかったのだが、あるときテレビ「スーパープレゼンテーション」でTEDに登壇していたJoe Smith氏の「紙タオルの正しい使い方」という回を見たおかげでこのことを知った。

 

濡れた手を紙タオルで拭く前に、手を振って水分を飛ばすことで紙タオル1枚で十分拭き取れるという主張のもと、これから実践をしてみるという文脈で、

Smith 氏

「手を濡らします」
「振ります」
「1, 2, 3, ..., 11, 12」
「なぜ12回かって?」
「キリストの使途 イスラエルの支族」
「月も 星座も 12個あって 私がこの数字を気に入っているからです」
「1音節で最も大きな数ですしね」(It's the biggest number with one syllable.)

 

出典|ジョー・スミス「紙タオルの正しい使い方」 | TED Talk (動画:4分25秒)

 

というのが彼の12に対する心である。

彼のおかげで、なにかをすきな理由は自分の中にだけあればそれでよいのだと思えた。

この映像の観客が、同じ理由で12を好きにならなかったとしても、彼が12を好きであることは感じられるだろう。それでよいのだろう。

 

④ 約数が多い12

九九の表を見てみる。

この表の中で同じ数が4回登場するのは、12のほかには18と24がある。

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 4 6 8 10 12 14 16 18
3 6 9 12 15 18 21 24 27
4 8 12 16 20 24 28 32 36
5 10 15 20 25 30 35 40 45
6 12 18 24 30 36 42 48 54
7 14 21 28 35 42 49 56 63
8 16 24 32 40 48 56 64 72
9 18 27 36 45 54 63 72 81

色付き箇所が反比例の線を思わせて美しい

 

これら3つの数は「過剰数」と呼ぶことができる。
過剰数とは、簡単にいうと、約数がたくさんある数。
ややこしくいうと、約数の和がその数より大きくなる数のこと。

 

12の約数:1, 2, 3, 4, 6, 12

12を除いた約数の和:1 + 2 + 3 + 4 + 6 = 16 ←12より大きいので過剰数 

*18, 24も同様

 

約数が多いということは、たとえば分配の際に都合がいい。

1ダースのチョコを2人、3人、4人、6人で等分することができる。

ギフト用のお菓子の詰め合わせも、12個、24個、36個と12の倍数が用いられるのを良く目にするのは同じ理由だろう。

 

⑤ 約数の個数と和が特別な12

先述の12の約数には、まだ性質がある。
それは、「約数の個数」も「約数の和」も完全数になるというもの。

完全数の詳細は過去の記事へ。

 

「12」

12の約数の個数:1, 2, 3, 4, 6, 12 →6

12を含む約数の和:1 + 2 + 3 + 4 + 6 +12 = 28

 

このような数を、「サブライム数」と呼ぶそう。

12の次にこの性質を持つのは76桁の数字で、現在知られているのはこの2つの数のみとのこと。

 

「6086555670238378989670371734243169622657830773351885970528324860512791691264」(76桁)

約数の個数:8128

約数の和:(2^127-1)×2^126 で表せる数(元の数よりもかなり大きい)

 
膨大だ。

膨大すぎて手に負えないのだけれど、だからこそ12の特別性として紹介したかった。

ちなみに"sublime"は、「荘厳な」「崇高な」「雄大な」という意味を表す英単語で、完全数同様、無数に存在するかどうかは知られていない。

 

⑥ 3と4から生まれる12

最後の項目である。
ご存知の通り、3と4を乗算すると12となる。

3 x 4 = 12

 
では、三角形と四角形から十二角形を作ることができると知っている方は、どれほどいるだろう。

ある日、罫線の変わりにドットが等間隔で施された手帳の上でドットを線で結び遊んでいた。三角と四角とを規則的に並べると、円のような図形が構成されたことに気づいた。

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2017年8月20日の日記より

 

「時計」という大発明の恩恵を受けておきながら、私はそれまで十二角形について考えたことはほとんどなかった。

「ほとんど」というのは、高校3年の頃、唯一解くことができた東大過去問『円周率が3.05より大きいことを証明せよ(2003年)』のために用いたのが、正十二角形であった。ほんとうは正八角形を使えば解けるのに、ずいぶんと遠回りをしたなと思いつつ、自力で解くことができたのはほんとうに嬉しかった。

 

なんだか脚注が長くなってきた。

 

正十二角形についての印象は、ほとんど円のようで、1つの角も大きく(150度)鈍角に開き、とっつきにくい印象があったのだ。

その、複雑そうに見える図形が、ラクガキから生まれた偶然の産物によって、三角形(正三角形)と四角形(正方形)というシンプルな図形のみで構成されていると分かり、歓喜した。

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手書きのスケッチをベースに線画データ作成

 

複雑に見えるものが、実はシンプルなものの組み合わせであった。
分けるは分かる」という信念が結ばれた気がした。
その気付きが嬉しく、さらに多くの構造を考えることになる。

 

⑦ 私についての12

先のようにして、十二角形に魅力を感じた私はそれを軸にスケッチを始めた。
ところで、私が描くこれらの十二角形は、正十二角形ではない。

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正十二角形(左)と私が描く図形(右)の比較。
下段の「図形の種類」では、使用する図形の形と個数を記したのだが、見返したら三角形の個数に誤りがあった。「6」個ではなく「12」個である(2019年2月5日追記)。

 

正十二角形とは、「すべての辺の長さ」と「すべての角度の大きさ」がそれぞれ等しい十二角形のこと。

私のスケッチの中の十二角形は、辺の長さも、角の大きさも異なる。

なぜこの変形十二角形を用いるかというと、内部を図形で敷き詰める際に三角形1種類と正方形を2種類とを使うことになる。

これにより図形そのものにリズムが生まれ、〈タテ〉〈ヨコ〉と向きを変えることでさらに表現のバリエーションが増えると考えた。

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上記を経て、数種類の構造を元に制作を始めたのが去年の10月。

今月はホームページやFacebookページを作り、情報を発信し(たいと強く思っ)ているので、よかったらご覧ください。

ホームページ 

Facebookページ 

 

12月のうちに書きたいと思っていたけれど、「せっかくなら完全数の28日に!」と思い至り、更新が間に合ってよかった。

 

まとめ(および抱負)

・7つの視点から12について書いた。

・自分のすきなものを相手にもすきになってもらう必要はないけれど、なぜすきかは伝えられるようにしたい。

・2019年は思考と発表の年にしたい(展示会2件+αにて)。

このフワッとした抱負でよいのか私、と問い、よい、と返ってきたのでよしとする。

 

次回の展示会

Dimension 2019(HPへ遷移します)

会期|2019. 03. 11 [月] - 03. 16 [土]
時間|12:30 - 19:30 *最終日は17:00まで
入場|無料
会場|Gallery ART POINT
住所|東京都中央区銀座 1-22-12 藤和銀座一丁目ビル 6F
*「新富町駅」「銀座一丁目駅」「東銀座駅」「銀座駅」より徒歩数分