1月7日は「巡回数の日」
久しぶりに日付の話。
スラッシュを用いて日付を書くと、
1月は必ず「分子が1の分数」が登場するのがとても興味深い。
本日1月7日は、1/7(7分の1)について書いてみる。
そのまえに
実は以前にも、1/7(7分の1)について一瞬触れていた。
「循環少数」について書いたときのこと。以下抜粋。
▼循環小数とは
・割り算をしても割り切れず、同じ数の塊が無限に循環し続ける数のこと
▼循環少数の例
・わかりやすいもの
1/3 = 0.33333... = 0.3(循環節は3)
5/6 = 0.83333... = 0.83(循環節は3)
100/11 = 9.090909... = 9.09(循環節は09)・複雑なもの
1/7 = 0.142857142857... = 0.142857(循環節は142857) ←ここ
今日話題にしたいのは、この1/7(7分の1)の循環節「142857」についてである。
これまでメインで話題にした数字の中で最も大きい6桁の数である。淡々と書いているが、興奮している。
数学のお兄さん
いつも心の中でお世話になっている 横山明日希さん という方が、こんなことを書いていた。
*直接的な交流もオンラインでのやりとりもなく、「歩くマスペディア」的存在として、一方的に、勝手に、心がお世話になっている。
本日は1/7ですね!おはようございます。
— 横山 明日希 -新メンバー募集中- (@asunokibou) 2019年1月7日
1/7=0.142857142857...となりますので、「142857」の雑学を紹介します! pic.twitter.com/O4INc0VZtE
いつも、“教科書”というよりは“新聞の端の4コマ漫画”のような立ち位置で、日常に軽々と数の世界の面白さをもたらしてくれる、数学のお兄さんならではの視点である。
この、「142857」と「9が連なる数」との関係に、私の心は打ちのめされてしまった。
11連休明け初出勤の昼休みに。
さて
上記の横山明日希さんの提示に言及するだけの知識を持っていないのだけれども、
「142857」の凄みを強調する特性が他にもあることは、Wikipediaを通して知っていた。
それが、今日書きたい「巡回数」である。
巡回数とは
巡回数とは、2倍、3倍、4倍...と乗算したときに、その各桁の数を順序を崩さずに巡回させた数になる整数のことをいう。
具体的にはこうである。
142857 × 1 = 142857(142857)
142857 × 2 = 285714(285714)
142857 × 3 = 428571(428571)
142857 × 4 = 571428(571428)
142857 × 5 = 714285(714285)
142857 × 6 = 857142(857142)
→「142857」という数字について2倍、3倍...と乗算をすると、それぞれの答えが「142857」を巡回させた数になっている。
*()は、数の巡回の様子を色の濃淡の違いで図示したもの
このように、乗算を繰り返した時、答えが元の数の数字を巡回する数のことである。視覚的にとても美しいと思う。
シャンプーのCMに出てくるような長い髪の女性が、亜麻色のそれをなびかせて振り返り、「きれいでしょう?」と目配せしかねない美しさである。
さらに、こう並び変えれば潤いのある髪の毛の艶がより眩しい。
142857 × 1 = 142857(142857)
142857 × 5 = 714285(714285)
142857 × 4 = 571428(571428)
142857 × 6 = 857142(857142)
142857 × 2 = 285714(285714)
142857 × 3 = 428571(428571)
ところで、先ほどの画像を思い出していただきたい。
横山明日希さんによると、
142857 × 7 = 999999
である。
すなわち、こうなる。
142857 × 1 = 142857(142857)
142857 × 2 = 285714(285714)
142857 × 3 = 428571(428571)
142857 × 4 = 571428(571428)
142857 × 5 = 714285(714285)
142857 × 6 = 857142(857142)
142857 × 7 = 999999 !?!?!?
7を掛けた際の異質さが際立つ。
これは、「1.0 ÷ 7.0」が循環小数(0.142857)になり、
「0.142857 × 7.0」が0.9(=0.999... = 1.0)になることに関連するそうだ。
本当は異質でも異常でもないのだが、あえてそう書いてみた。
さらに、さらに面白いことに、
8以降崩れてしまうように思える特性だが、規則的に加工することで巡回は保たれる。
規則:
先頭の数を切り離し、末尾の数(一の位)に加える。
142857 × 8 = 1142856 → 1 + 142856 → 142857
142857 × 9 = 1285713 → 1 + 285713 → 285714
142857 × 10 = 1428570 → 1 + 428570 → 428571
142857 × 11 = 1571427 → 1 + 571427 → 571428
142857 × 12 = 1714284 → 1 + 714284 → 714285
142857 × 13 = 1857141 → 1 + 857141 → 857142
142857 × 14 = 1999998 → 1 + 999998 → 999999
142857 × 15 = 2142855 → 2 + 142855 → 142857
142857 × 16 = 2285712 → 2 + 285712 → 285714
また彼女の美しい髪がなびくのが見える。
うつくしいもの
唐突に問いが浮かぶ。美しいものは、異常か、それとも異質か。
そもそもその二択ではないだろうということもわかりつつ。
「異常(正常でない、普通でない)」はどちらかというと外面や物理的な存在を、
「異質(性質が異なる)」は内面や抽象的な存在を表している気がする。
そういう点で、美しさについて考えるときは、同時にその「異質さ」について考えているように思う。
この考え方をするようになったのは、人生で初めて同じ映画のために3度劇場に足を運んだ、『言の葉の庭』(2013年)による。
正確にはその翌年に出版された小説版にて、このような文章があった。
洒落た制服に身を包んだ雪野はもちろん飛び抜けた美少女(略)だったが、そういう役割のようなものを帯びることで彼女の美しさはようやく落ちつき先を見つけたのだ。「すげえ美人がおるらしいぜ」と家から自転車と汽車とさらにもう一台自転車を乗り継いで通う進学校では噂にはなったが、その美しさは単に異質なだけでありもう異常ではなかった。
言の葉の庭|新海誠著 |KADOKAWA/メディアファクトリー|44頁
何かについて考えるとき、別の何かに倣って(その筋をたどるように)考えることは、その思考を補助してくれるように思う。
つまり、4年前に出会って何度か読み返し心に留めたこの文章が、今の私の思考を手伝ってくれている。
話をもどす
この「巡回数」、英語では「Cyclic Number」と綴られる。
私は「Cyclic」から「循環」を連想するが、恐らく「循環少数」との混同を避けるために「循環」ではなく「巡回」と名付けられたと思われる。
ただし「ダイヤル数」と呼ばれることもあるそうで、こちらのほうが数の性質をイメージしやすいとも思う。
2019年1月7日(月)は、眼鏡をどこに置いたか忘れたり、ココアを取りに行ったのに塩を持って戻ったり、本を開いたのにラジオに聞き入ったり、どこかぐるぐるとした一日だった。
けれども、それが巡回数の日に起こったことならば、面白がれる。
まとめ
・1月7日は「巡回数の日」
・「142857」は「巡回数」で、乗算すると各位の桁が順序を崩さずに巡回する
・上手くいかないことも解釈を変えて面白が(れ)る(と思うことにする)日
昭和最後の日でもあるこの日、巡る時間や時代にも心を傾ける。