そして今年の「完全数の日」が終わる
6月28日。今年の「完全数の日」が間も無く終わる。
28といえば、今週月曜日に将棋の公式戦連勝首位タイ記録が29に更新された。
喜ばしさと心寂しさを同時に感じて複雑な心境だったが、神谷八段のお話を耳にし、先のざわつきは静かに収束した。
〈神谷広志 八段のお話〉
28という完全数は一番好きな数字ですので、それが1位でなくなることは個人的に少々寂しいのですが、凡人がほぼ運だけで作った記録を天才が実力で抜いたというのは、将棋界にとってとてもいいことだと思います。
http://www.asahi.com/sp/articles/ASK6V7QH0K6VUCVL03L.html より
また、本日の読売新聞一面〈編集手帳〉も、完全数の話を取り上げていた。
いろいろな人が完全数のことを考えていると知り、嬉しい。そういうわけで、塗り替えられた記録にあやかり、28と29の関係について書いてみる。
繰り返し訪れる28桁の塊
直接的な関係ではないが、29の逆数である「1/29(29分の1)」は、28桁の循環小数になっている。
循環小数とは、割り算をしても割り切れず、同じ数の塊が無限に循環し続ける数のことだ。
3人で食事に行き、8000円の会計が割り切れずに端数を多く払う(または払わされる)という経験が、誰しもあるだろう。
循環小数の例
具体的には、このような数である。
・わかりやすいもの
1/3 = 0.33333... = 0.3(循環節は3)
5/6 = 0.83333... = 0.83(循環節は3)
100/11 = 9.090909... = 9.09(循環節は09)
・複雑なもの
1/7 = 0.142857142857... = 0.142857(循環節は142857)
例が少ないのは私の知識不足に他ならない
複雑なものになると、本当に循環しているのか調べるのも大変だ。
中学生の頃のテストで、問題文が「以下の分数を循環小数に直しなさい」と言い、手計算で求めたうち最も長い循環小数が「1/7」だったと思う。
確認のためにやってみた。
こんなこと、循環小数だと言われなければ初めからやっていない。
たった6桁のでもこんなにややこしい気持ちになってしまうのだ。
おっと、こんなところに完全数の6登場。
28桁の循環小数
さて、28と29の話に戻ろう。
29分の1は、小数に直すと、こう表せるらしい。
1/29 = 0.0344827586206896551724137931(循環節は28桁)
つまり、この下線部28桁を無限に繰り返す、循環小数であるらしい。
1/29 = 0.03448275862068965517241379310344827586206896551724137931034482758620689655172413793103448275862068965517241379310344827586206896551724137931034482758620689655172413793103448275862068965517241379310344827586206896551724137931...
ものすごい迫力と何らかの圧力を感じる。
線の疎密がグラデーションのようできれいだ。
循環小数の良さ
無限に循環するから終わりがないけれど、循環小数は必ず分数の形(◯÷△)で表すことができる。
そこが循環小数の「気持ち良さ」だと思う。
ほんの出来心で「1/29」の箱のふたを開けたばっかりに、28の塊が無限に押し寄せて私の呼吸を妨げた。けれど、ひと暴れしたら彼らはきちんと循環節のところで腰をただんでもとの箱へと帰っていく。
循環小数にはそういう素直さがある。循環少数と分数との相互変換が比較的簡易なことからも伺える。そこが良いと思う。
「完全数の日」に何をしたか
結局、変わったことは何もしていない。
けれど、資料や議事録や電話の不在表に6月28日と今日の日付を書くのが楽しかった。
口実のおかげで「良い日だった」と思いながら眠れるなら、それが一番だ。
まとめ
・29の逆数は、28桁の循環小数である
・無限に続く循環小数は、必ず分数の形で表せる
・29は素数でもあり、ほかにさまざまな性質を持っているが、完全数を用いて29の特別性を感じられたのは嬉しい。
28日はもうすぐ終わるけれど、6月はもう少し続く。
完全数をたっぷり味わう梅雨にしよう。